MT5ストラテジーテスターのレポートの見方:PF・ドローダウン・勝率の次に見るべきもの
MT5ストラテジーテスターのレポートは、プロフィットファクター・ドローダウン・勝率で「EAが勝っているか」を示します。一方で、負けが入口(エントリー)と出口(決済)のどちらの問題かは示しません。次に直す場所を決めるには、取引ごとの最大含み益(MFE)と最大含み損(MAE)を追加で見る必要があります。
レポートの主な項目
レポートの上部には、期間全体をまとめた数字が並びます。表示名はターミナルの言語設定で変わるため、ここでは英語の項目名と意味を並べます。
| 項目 | 意味 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| Total Net Profit | 期間全体の損益(総利益 − 総損失) | 同じ損益でも、取引数とドローダウンで中身は大きく違います。 |
| Profit Factor | 総利益 ÷ 総損失 | 1を超えれば期間全体ではプラスです。取引数が少ないと大きくぶれます。詳しくはプロフィットファクターの解説で扱っています。 |
| Expected Payoff | 1取引あたりの平均損益(損益 ÷ 取引数) | スプレッドや手数料の増加に弱い戦略かどうかの目安になります。1取引あたりの利益がコストに比べて小さいと、条件が少し変わるだけで消えます。 |
| Recovery Factor | 損益 ÷ 最大ドローダウン | ドローダウンに対して、どれだけ稼いだかを示します。 |
| Balance Drawdown Absolute | 初期資金から、残高が一番下がったところまでの幅 | 初期資金を割り込まなければ0になります。期間の途中で起きた大きな下落は反映されません。 |
| Balance Drawdown Maximal | 残高の山から谷までの最大の下落(金額、括弧内に%) | 口座が実際に耐える必要のある下落です。 |
| Balance Drawdown Relative | 残高の山から谷までの最大の下落(%、括弧内に金額) | Maximalと同じ下落とは限りません。資金が小さい時期の下落は、%では大きく出ます。 |
| Equity Drawdown | 含み損益を含めた有効証拠金でのドローダウン | 保有中の含み損を含むため、Balanceより大きく出ます。ナンピンやマーチンゲールの危うさは、こちらに表れます。 |
| Total Trades / Profit Trades | 取引数と、そのうち利益で終わった割合(勝率) | 勝率だけでは良し悪しは決まりません。平均利益と平均損失の比と一緒に見ます。 |
| Maximum consecutive losses | 最大連敗数(括弧内に損失額) | 実運用で精神的にも資金的にも耐えられるかの目安です。 |
レポートの数字だけでは分からないこと
レポートの数字は、どれも結果の合計か平均です。EAのどこを直すべきかは、合計からは分かりません。
たとえばプロフィットファクター0.58のEAは、負けていることだけが分かります。負けの原因には2種類あります。
- 一度は含み益があったのに負けた(出口の問題):エントリーは合っていて、利益を手放しています。利確幅・トレーリングストップ・建値への移動を見直します。
- 入ってすぐ逆行した(入口の問題):出口を変えても助かりません。エントリー条件や、入る相場の絞り込みを見直します。
この2つを見分けるには、取引ごとのMFEとMAEが必要です。MT5のレポートには載っていません。考え方はMFE・MAEの解説にまとめています。
例:サンプルのレポートを分解する
合成データのEURUSD M15で動かしたブレイクアウトEAのレポートを例にします。レポート上の数字は次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 取引数 | 136 |
| 勝率 | 33.8%(46勝90敗) |
| プロフィットファクター | 0.58 |
| 損益 | −965 |
| 最大連敗 | 18回 |
ここまでで分かるのは「負けている」ことだけです。同じ期間の足データを使って、取引ごとにMFE・MAEを計算すると、90件の負けは次のように分かれました。
| 負けの種類 | 件数 | 取引を選び直したときの割合の幅 |
|---|---|---|
| 一度は含み益があった(出口の問題) | 31 | 27〜43% |
| 入ってすぐ逆行した(入口の問題) | 30 | 24〜41% |
| どちらとも言えない | 29 | - |
割合の幅は、負けトレードを復元抽出で1,000回選び直して求めた5〜95%の範囲です。2つの幅がほぼ重なっているので、このままでは「どちらが多い」とは言えません。
ここに1取引あたり3pipsのコストを加えると、内訳は出口の問題22件、入口の問題40件に変わります。最大含み益がコストより小さい取引は、実際には利益を取れないためです。コスト込みで見ると、このEAの負けは入口の問題のほうが多いと言えます。
損切りが狭すぎる可能性も確かめました。損切りされた90件について、決済後に典型的な利確幅まで届いたかを調べると、届いた取引は0件でした。このEAでは、損切りが狭すぎる兆候は見られません。
相場で分けると、136件中93件がレンジ相場で入っていて、損失−965のうち−685がそこから出ていました。ブレイクアウトEAなので、出口の調整より「レンジでは入らない」フィルターが先の候補になります。相場の分け方は相場環境別の解説で扱っています。
自分のEAで試す方法
Hawk BacktesterのMT5レポート分析ツールは、ここまでの分解を自動で出します。無料で、登録は不要です。ファイルはブラウザの中だけで処理され、送信されません。
- ストラテジーテスターの結果タブで右クリックし、レポートをHTMLで保存します。
- 同じ銘柄・期間の足データを、MT5の銘柄画面からCSVでエクスポートします(MFE・MAEと相場別の成績に使います)。
- ツールに2つのファイルを読み込みます。足データがなくても、基本の集計と決済理由は表示されます。
対応しているのはMT5のHTMLレポートだけで、MT4にはまだ対応していません。
よくある質問
Balance DrawdownとEquity Drawdownは、どちらを見るべきですか?
両方です。Balanceは決済した損益だけで計算するため、保有中の含み損を含みません。ポジションを長く持つEAや、ナンピンするEAでは、Equityのほうが実際に耐える必要のある下落に近くなります。
プロフィットファクターがいくつあれば実運用してよいですか?
決まった基準はありません。取引数が少ないと数字は大きくぶれ、スプレッドが広がるだけで1を割ることもあります。プロフィットファクターの解説で、取引数とあわせた見方をまとめています。
足データは、どの時間足をエクスポートすればよいですか?
EAと同じ時間足か、それより短い足です。短い足ほど、取引中の値動きを細かくたどれるため、MFE・MAEが正確になります。